葉桜
こんにちは、水野亜土です😆
初投稿の今日は、爽やかな二人を書いてみました!
もう季節は過ぎてしまいましたが、みなさん🌸桜🌸は好きですか?私は桜は好きですが同時にくる花粉がちょっと。。🤣
情景描写をがんばりました!青春なふたりをお楽しみください!
朝練のあとの授業は眠い。
四葉は、ふわぁっと小さくあくびをすると、朝練で火照ったふくらはぎを撫でた。幼い頃から走るのが好きで、陸上部が強いから、という理由でこの高校を選んだ。
四葉の席は窓際の特等席。
窓からそよ風に舞う桜の花びらが見える。こんなにいい天気だ、正直授業なんか聞かないで外に行きたいのに。
心地よいまどろみの中、四葉は思い出に浸っていた。
………………
朝、校庭に着くと葵さんはもう待っていた。
「来てくださってありがとうございます!」
ポニーテールに結い上げた髪が首元をくすぐる。私は口元が緩んでしまうのを隠すように深くお辞儀した。
葵さんは陸上部の先輩で、憧れの人。
爽やかで、優しくて、足が早くて。
部活中、褒めながらも的確なアドバイスをしてくれる葵さん。気づいたら目で追うようになっていた。
クールダウンの時の少し疲れた、けだる気な顔がたまらなく好きだ。風で乱れ、かきあげた前髪。
今朝は、勇気を出して朝練に誘ったのだ。
たまに一緒に帰って家まで送ってくれたけど、途中までみんなと一緒だったし。昨晩は来てくれるかどうか不安で、気持ちを押し殺すため、ずっとアロマを炊いていた。
来てくれて本当に嬉しい。
校門を出て、土手沿いを軽くジョギングで往復する。土手沿いは起伏が緩やかで景色も良い絶好のコース。
前を走る葵さんの背中を見つめ走りながらふと考える。
葵さんは私のことどう思ってるのかな。朝練誘ったりして変に思われてないかな。
私は葵さんにとって、ただの後輩で、練習仲間。一緒にいれるだけで幸せか。
風を切って走る葵さんに、時々振り向いて私を気にしてくれる葵さんに、ただただ伝えられない好きという気持ちが苦しくて、息を大きく吐いた。
邪念を振り払うようにペースを上げる。
「四葉!今日ペース早いじゃん!」
この爽やかな声に悩まされるのだ。
「景色が良くて調子がいいんです!」
軽くの予定だったのに、葵さんはがんがんスピードをあげる私についてきてくれた。
私がペースを上げるごとに葵さんがペースをあげるから、負けまいと小さな意地を張る。するとまた葵さんが追い抜いていって。
最後は二人で全力疾走。
校門に戻ってきた時には息が乱れまくりで、二人で顔を見合わせて笑ってしまった。
「四葉っ、お疲れさん!」
葵さんが白い歯をのぞかせて笑う。
屈託のない笑顔。
走り終わったあとの胸の鼓動と重なり一瞬息ができなくなる。
「葵さん!今日の部活後も一緒にいれませんか!」
言ってしまった。
走ってかいた汗とは違う汗が背中を流れた。
勢いでこんなことを言うなんて。
葵さんは少し驚いた顔をした。
「…どゆこと?」
心地よいはずの声が突き刺さる。
「いや……葵さんと一緒にいると、練習が捗るから。。っていう。。」
我ながら苦しい言い訳。
「ふーん。練習でいいんだ?
俺、さすがに部活後は練習したくないなぁ。」
「…あ、そうですよね。。」
引きつる顔を見られたくなくて無理やり笑顔をつくる。
そうじゃないのに。そうじゃないって言えなくて。思わず唇を噛んだ。
好きですって言えたらどんなに楽だろう。ずっと目で追っていた人を前に、立ちすくんでいる自分が情けなくて、下を向いた。
「俺はさ、練習じゃなくて、デートがしたいな。」
降ってきた声に驚いて葵さんの顔を見ると、葵さんは見透かしたような目で笑っていた。
胸の鼓動が早くなる。
「…え。」
そう言って微笑む葵さんの肩に桜の花びらが舞い降りた。
もう後には引けそうにない。
「好きだから、一緒にいたい、です。」
窓から外を見ると今日も自主練をする葵さんの姿が見える。私の"彼氏"は舞い落ちる桜の花びらがよく似合う。
明日の朝練はどんな髪型で行こうか。
散っていく桜の花びらが私の心につもってピンクに染めてくれる。
さくらは散るときが一番美しい。